第4弾は2007年1月。

 関数・微分方程式がビジュアルにわかる

   微分積分の展開

数学・物理学・工学の三位一体

 

ISBN 4-320-01796-2

予定定価:本体2500円

著者

江見圭司(京都情報大学院大学)

 

まえがき

 

 「微分・積分」といえば,「計算ばかりで面白くなかった」というのが世間一般のイメージであろう。結局,高校でも大学でも「微分・積分」は計算方法しか教えていないのではなかろうか。

 微分・積分は解析学と呼ばれて古くから存在する分野である。19世紀にフランスの数学者コーシーが,「極限に始まり,微分法と微分法の応用を解説して,積分法と積分法の応用で終わる」というスタイルを確立して以来,世の中の多くの微分積分の教科書はこのスタイルを踏襲した。それでも,1973年から1995年くらいまでは,高校では積分法の応用の一例として簡単な微分方程式を扱っていた。そのため,その当時の高校生は微分方程式の重要性を知っていた。微分方程式こそ,微分・積分を学ぶ最終目的にしてもしてよいぐらいである。さて,現在の高等学校の数学の最終段階は微分・積分を扱った「数学III」という科目である。現行のこの科目の欠点は微分方程式をあまり扱わないことにある。そこで,本書は微分方程式までを扱った数学III+αの範囲の教科書を作成した。

 本書の特徴は,コーシーのスタイル(極限,微分,積分の順に展開するやりかた)をやめて,関数の種類別に,微分・積分・微分方程式を一貫して扱ったことである。微分と積分は不可分の関係にあるという考えから,本書では「微分積分」という表現している。関数の種類別とは,n次関数,無理関数と分数関数,指数関数,三角関数の順に章立てを行い,それぞれの章で微分・積分・微分方程式を一貫して扱ったのである。更に数値計算や複素数,2変数関数も扱った。こういう画期的な構成は,数学教育の現場にはなかなか受け入れられない可能性がある。しかし,コーシーのスタイルでは初めに抽象論が出てきて,実用的なところへ行くまでに学習者は疲れてしまうのである。事実,コーシーの講義はパリ理工科大学では評判が悪かったのである。19世紀に評判の悪かった講義スタイルを21世紀になっても続ける義理はどこにないはずである。

 21世紀はコンピュータ全盛の時代である。微分積分の用途別に展開していく教科書のスタイルを便利であると共感して頂けると考えている。しかも関数を無限級数の和で展開(expansion)する考え方を重視するが本書の考え方である。こういう展開(evolution)は数値計算主義のオイラーの考え方に近いかもしれない。オイラーに戻れ(Back to Euler)が本書の目標である。

 

目次

1章 n次関数の微分積分

1節 微分

1.1.1 傾斜と導関数

1.1.2 時間による微分

1.1.3 微分演算子

2節 微分積分の計算

1.2.1 直線・曲線の下の面積と数列の和

1.2.2 微分積分の基本定理

1.2.3 面積と体積

1.2.4 時間による積分

3節 微分方程式

1.3.1 速度を調べる

4節 微分積分の計算

1.4.1 関数から解析幾何へ

1.4.2 合成関数の微分法と置換積分法

1.4.3 積の微分法と部分積分法

2章 分数関数と無理関数の微分積分

1節 分数関数の微分

2.1.1 分数関数

2.1.2 反比例のグラフの平行移動

2.1.3 逆2乗則

2.1.4 分数関数の微分

2.1.5 分数関数の積分

2節 無理関数と逆関数

2.2.1 分数関数

2.2.2 関数と逆関数

3節 微分積分の拡張

2.3.1 逆関数の微分法

4節 重心と長さ

2.4.1 重心

2.4.2 重心の応用

2.4.3 曲線の長さ

3章 指数関数の微分積分

第1節 指数関数の微分

..1 指数関数的変化

..2 標準の指数関数

..3 自然対数の底 e

第2節 指数関数の積分と対数関数

..1 自然対数の底

..2 底が一般の場合

..3 懸垂曲線

第3節 成長と衰退

..1 指数関数と微分方程式

..2 いくつかの例

..3 指数関数の増加の程度

..4 成長率と伸び率・倍率

第4節 対数と微分積分

..1 対数と微分

..2 部分積分法の再説

..3 指数・対数と極限

第4章 三角関数の微分積分

第1節 三角関数の微分

..1 等速円運動

..2 三角関数のべき級数展開

..3 フーリエ解析をめざして

第2節 三角関数の積分

..1 三角関数の積分

..2 円や球の面積・体積

..3 逆三角関数

第3節 円運動と振動

..1 円運動

..2 単振動

..3 微分方程式の意味

..4 指数関数と三角関数の組み合わせ

第4節 解析幾何と微分積分

..1 解析幾何の考え方

..2 曲線の長さ再説

第5章 連続・近似と数値計算

第1節 極限と連続

5..1 等比数列から指数関数

5..2 いろいろな数列の極限

5..3 無限に続く数列の和

5..4 関数の連続

第2節 微分と数値計算

5..1 関数の近似

5..2 微分を使ったコンピュータを用いた計算

5..3 数値微分

第3節 積分法とコンピュータ

5..1 区分求積法

5..2 台形公式

5..3 シンプソンの公式

第4節 微分方程式とコンピュータ

5..1 微分方程式と方向場

5..2 微分方程式の数値計算

第6章 複素数・2変数の展開

第1節 複素数平面とオイラーの公式

6..1 複素数の和・差と複素数平面

6..2 複素数の積・商と極表示

6..3 指数の拡張

第2節 微分演算子と微分方程式

6..1 線形演算子の利用

6..2 減衰運動の解析

第3節 2変数関数

6..1 2変数関数

6..2 偏微分

6..3 物理現象と多変数関数

第4節 モデル化とシミュレーション

6..1 モデル化

6..2 微分方程式とモデル化