大学でのeラーニングの推進を願って
How
to promote the e-learning in universities
Tsuneo Imai : The Kyoto College of Graduate Studies for
informatics
Abstract
I intend to mention to overview the
situation about e-learning in universities of
And I will introduce you the plan
about e-learning system in The Kyoto College of Graduate Studies for
informatics
キーワード : eラーニング 遠隔講義 コンテンツ 教授法 編集機能
はじめに
日本e−Learning学会がNPO法人として活動を始めて3年になりますが、この期間の成果に対して、
石島会長以下、関係の方々のご努力に対して厚くお礼申し上げます。私は昨年の6月末に兜x士通
ラーニングメディアの取締役を退任し、10月から京都情報大学院大学に勤務しております。兜x士通
ラーニングメディアでは、従来の集合研修の他に、新たな研修形態としてeラーニングに精力的に取り
組んでおりました。新たな職場でもeラ─ニングに対する関心が高く、2005年から新たな取組みが始ま
ろうとしており、その考え方を紹介いたします。
1.京都情報大学院大学について
京都情報大学院大学は新しい大学院ですので簡単に紹介をいたします。新たに発足した専門職
大学院の制度に対して、IT系の専門職大学院として申請、認可され、昨年の4月に開校しました。
昨年の70数校新設された法科大学院と同じような趣旨です。
「Webビジネス技術専攻」として、Web系のビジネススキルとWeb系の技術を兼ね備えた人材の育成を
目指しています。
設立にさいしては、eラ─ニングを積極的に取り入れることを明記しています。その方針に基づいて、
現在の多くの大学での状況を踏まえた上で、京都情報大学院大学の現在のeラ─ニングへの取り組み
について紹介します。eラ─ニングには、遠隔地とのライブでの双方向の講義と、非同期で学ぶ
eラーニング(パソコンでコンテンツを使って学習する)の2つの形態を取り入れる計画です。
2.大学でのeラ─ニングへの取組みについて
国内の大学でeラ─ニングに積極的に取り組み始めていることは、最近の各大学の状況から明らかな
傾向であり、優良コンテンツの相互利用の仕組み、eラ─ニングのためのLMSの共同開発、海外の
コンテンツの日本語化など、様々な前向きの諸活動が精力的に推進されていることは喜ばしいことです。
しかしながら、eラ─ニングで教えることに対して依然として消極的な立場を取る方々が多いことも事実です。
eラ─ニングという新たな形態での教育効果が十分に明らかになっていないこと、コンテンツそのものを
作ることになる先生方自身が、これまでの対面講義で使ってこられた教材を、インストラクションの観点から
eラ─ニングのコンテンツ化することに躊躇していること、著作権処理など、これまで対面講義では
不必要だったことが必須になったこと、eラ─ニングを運用するための様々な要員(教授法の確立と
そのコンサルタント、コンテンツ作成をサポートする要員、メールやディスカッションをサポートする要員)の
確保をどのようにするかなど、多くの問題点を残したままですが、できるところから進め、先ず、多くの実績を
挙げていくことが最善の策と考えます。
3.遠隔講義(双方向のライブ講義)
京都情報大学院大学及び相手方どちらの組織も、講師と学生とその教室の立場と、遠隔の講義を受ける
学生と教室の立場になりうる。特に、相手側の特別な設備が不要な方式が好ましい。
3.1 学外との遠隔講義
相手となる対象: 国内外の大学、その他の機関とライブで送受信する。
使用する回線 : インターネット環境
3.2 学内での遠隔講義
新設のスタジオでライブの配信を行う。学内の複数の教室でライブ受信する。
・使用する回線 : イントラネットを使い、1M程度の帯域を確保する。
3.3 スタジオ設備および受信側の設備
・スタジオ
遠隔講義をリアルで配信できる環境
入力 配信側、受信側ともに
ビデオカメラ、音声
コンテンツ 各種電子データ、板書も可
表示装置 プロジェクタなど
・講義形態
講師は教室内の受講生に向かって普通の講義をする。教材は、PPTを主とした
電子データとし、板書を使うこともある。
・配信方法
講師の映像、音声、使っているコンテンツを同時配信する。
・方向性 双方向を基本とするが、双方で同等の設備を前提とはしない。
4.eラーニング
京都情報大学院大学でライブで配信した講義や、スタジオで収録した講義をコンテンツ化し、
非同期のeラーニングシステムを運用する。
4.1 編集設備
簡易な編集機能が必須である。雑音、咳、不明瞭な発音、不適切な言葉、明らかな間違い、
より良い表現に修正、などの要因からコンテンツの修正は 必須機能である。 章単位の
差し替えもあり得る。
4.2 電子データ編集の要件
現在はPPTによる電子データが中心であるが、それを、PDF化したもの、FLASHのデータなど、
様々なデータを前提とする。また、電子データのコンテンツの中から、ハイパーリンク機能で、
インターネットのホームページにリンクしたコンテンツも多数ある。静止画、動画、音声の貼り付け、
リンクもあり得る。
このような、将来を含めて、柔軟なコンテンツを作成できることが必須である。
4.3 eラーニングの環境
2004年4月から、WebCTを運用している。この環境を前提にして、効果的なeラーニングの環境を
実現する。学習の進捗管理、メンター、チュータの機能等は、必須であるが、WebCTの機能と
連携して実現させる。
eラーニングのクライアントの環境には、特別なソフトを必要としないことを前提とする。但し、現時点で
多くのアプリケーションで使用されているフリーソフトは、組み込む。
4.4 利用対象者
学内の学生、学外の利用者、社会人学生、聴講生など幅広く対象とする。講義以外のコンテンツに
よっては、学外向けのホームページに掲載し、広く広報する。
学内の研修(セキュリティの徹底、教授法の研修、学内の様々な運用規定など)に有効利用すること等を、
考慮する。
4.5 コンテンツ
学内で作成するコンテンツのほかに、導入するシステムで、有用と判断されるコンテンツについては、
外部からのものを利用する。特に、ビジネス関連のコンテンツに関しては、積極的に利用する。
4.6 運用システム
学内のサーバのほかに、ストリーミングのコンテンツを快適に利用する環境を実現するためには、
一般のASPサービスを積極的に利用することも考慮にいれる。
現在の大学でのeラーニング推進状況は積極的な活動が顕著ですが、多くの課題も残っていると
認識しています。こうした状況を踏まえて、社会人も含めた教育の機会を増やし、グローバルな
競争社会に勝てる有能な人材を育成するには、eラーニングが一つの有力な手段になりうると思います。
このような環境の中で、日本e−Learning学会が、今後も主導的な役割を果たしていくように、
学会員各位の積極的な活動に期待し、私自身も微力ながら、学会活動に貢献したいと願っております。
1969 京都大学大学院
工学研究科 数理工学専攻 修了
1969 富士通株式会社 入社
2000 兜x士通ラーニングメディア 取締役
2004 京都情報大学院大学 教授