2005年日本e-Learning学会 学術講演会 オープニング講演
日時 2005年11月18日(金曜日)・19日(土曜日)
開催会場 学校法人コンピュータ総合学園 北野館(ソニックホール)
京都情報大学院大学 教授
ご紹介いただきました今井でございます。
まず、今回の学術講演会の開催に当たり、様々な準備にご尽力いただいた方々、
企業展示にご協力いただいたそれぞれの企業の方々に、心からお礼申し上げま
す。
また、今回、初めて関西での開催に当たり、快く会場を提供いただいた
コンピュータ総合学園の皆様に厚く御礼申し上げます。
ありがとうございました。
新幹線の新神戸駅にも近く、近畿圏以外から参加いただいた方々にも最適な場
所であったと思います。
さて、オープニング講演の機会をいただきましたので、eラーニングの将来
について私の期待も含めて何点か話をさせていただきます。
まず、eラーニングを取り巻く環境が、これから大きく変化するのではない
でしょうか。個人あるいは、比較的規模の小さい組織で、先進的に取り組んで
こられた状況が、例えば大学組織全体として、推進されるケースに広がりを見
せてくるように感じます。これは、現在大学を始め、多くの教育機関がおかれ
ている厳しい環境もその一因かもしれません。
インターネットのインフラの急速な整備と、それを利用する様々なビジネス
がまさにドッグイヤーのスピードで展開されています。
eラーニングもそうした新たなビジネスとして急速に普及する大きな可能性
を持っていると思っています。
ここで幾つかの流れに注目してみましょう。
1.新たなビジネスとして立ち上がってきていること
18年度の大学等設置申請では、旭インターネット大学院大学さんが「構造
改革特別区域法に基づくインターネット等のみを用いて授業を行う大学院大学の設置
申請」をなさっておられます。また、熊本大学さんは大学院に「eラーニング専門家養
成専攻」を新たに設置し、共に、全国どこからでもネット授業を受けられるイン
ターネット大学院という特徴をお持ちと聞いておりますが、eラーニングでの新た
なビジネスが始まる胎動を感じます。
2.標準化が進むこと
アメリカを軸とする様々な団体で、標準化が進んでいます。
特別講演のDr. Charles R.
Severanceさんから紹介や、明日のパネルディスカ
ッションでも話題になると思いますが、SCORM、MIT OKI、IMS
など、これまでの幾つかの規格がそれぞれ矛盾しない形で大枠が固まってくる
と感じます。
3.オープン化が進むこと
米国科学財団(NSF)、メロン財団(Andrew W.Mellon
Foundation)など
による開発支援で様々なプロジェクトが進んでいる中で、注目すべきはメロ
ン財団による研究助成を受けるプロジェクト、sakaiプロジェクトです。
sakaiプロジェクトは今年の秋からサービス開始の予定と聞いておりました
ので、今日のDr. Charles R.
Severanceさんの講演に期待しています。
sakaiプロジェクトで、これまでにない特徴は、ソースコードの公開だけは
なく、事業活動への自由(オープン)な活用を保証していることです。
この成果は日本でも自由に利用できるので、成果の事業活動での活用の保証
は、大学にとって民間の企業から、サービスを受けられる可能性が高いこと
を意味します。
ちなみに、WebCTは当初無償で提供していましたが、ユーザの増加と研究
費でのサポ―トが出来ないという制約から、別の会社で、ライセンス販売と
ユーザサポートを実施していました。
WebCTは別の会社に買収されたため、今後の動きは分かりませんが、sakai
プロジェクトの成果をビジネスの1つとして立ち上げる可能性もあるのでし
ょうか。
4. UPKI構築の構想
大学間連携のための全国共同電子認証基盤(UPKI)が国立情報学研究所と
7大学情報基盤センターの共同事業として検討が進められ、平成18年度の
概算要求として提案なさっています。
インターネット技術の進展と共に、社会のあらゆるサービスが、ネットワーク
を通じて提供されるようになって来ました。大学においても、研究、教育、図
書館教務サービスなどの、大学の先生と学生が中心になるもの、また、法人系
の業務などキャンパス内での活動がインターネットとその組織内のイントラ
ネットを基盤として電子化が進んでいます。この各種サービスを電子的な認証
を行ってから提供する基盤の一つとして、大きな利用価値があると考えられま
す。例えば、大学間の単位互換、eラーニングの相互サービスでも便利に利用
できるでしょう。早期の実現が望まれます。
法整備など別の観点からは、著作権法の第35条などでeラーニングに対する
対応が遅れていることなどが残念ですが、早晩、進むと期待しています。
以上、挙げました4つの動向から、eラーニングのこれからの動きが活発に
なると期待しています。本学会の活動もさらに活発になると思います。
私の属する組織でも、今年の4月から、様々なeラーニングの形態に対応で
きるシステムを導入し、主に、実際の講義の録画によるコンテンツ作成と、
それを使ったコースを実施しています。2年ほど前から使っているCMS、
WebCTを10月にWebCT-vistaにレベルアップしました。
入れて一ヶ月ほどが経ちましたが、初期トラブルがそろそろ落ち着く段階にな
っています。
コンテンツ作成は、企業展示でごらんいただける、富士通グループが販売し
ている作成ツールを使っています。講義が終わった時点でストリーミング形式
のコンテンツが出来上がっていますから、先生にはPOWERPOINTなどで作
成した電子教材を用意すること以外には、eラーニングコンテンツ作成に対し
て特別な負担はありません。
現在、コンテンツを蓄積している段階です。
このように、グローバルな動きを見ますと、今後は、先生方が良いコンテン
ツを作ることと、対面での講義以上に、学生に対するCMS上でのサービスを
充実させることがとても重要になります。
eラーニングの共通インフラがグローバルな環境として整備された段階にな
れば、組織を超えて、例えば、他の機関との間でもコンテンツをラーニングオ
ブジェクトレベルで、相互に利用することができ、これまでの、ややもすると、
閉鎖的であった講義から、新たな質の高いオープンな講義に変えていくための
道具として、有効に使えるのではないでしょうか。例えば、学生ごとに個別化
したコースを組み立てることもできるようになるのではと思っています。
最後に、今日、明日の、それぞれの発表とパネルディスカッションに対して、
皆様の積極的なご参加を期待しまして、私のオープニング講演を終わらせて
いただきます。
ご清聴ありがとうございました。
以上